親の自分も発達障害なのではないかと思っている。発達障害は遺伝するの?

こんにちは!ゆう先生です!
今日は、未就学児のお父さんからのご相談にお答えしますね。

テーマは、「親の自分も発達障害なのではないかと思っている。発達障害は遺伝するの?」
というご質問です。

自分の自閉スペクトラム症の息子を見ていて「なぜ、こんな行動ばかりなのだろう?」と思っていたら、
自分の母親に「あなたも昔はこんな行動が多かったよ」と言われて衝撃でした。
確かに一つの物事に没頭したり、人との会話の空気(空気感)を読めないなんてことは今だにありますが、
自分も同じ行動をしていたと言われると、自分も発達障害なのかな?と心配になってきました。
実際、発達障害は遺伝するものなのでしょうか?
というご質問になります。
結論を言うと「発達障害は遺伝しやすい」と言えます。
ただもう少し深掘りすると、本人もお父さんも気持ちがちょっと楽になるかもなので、本日は発達障害の遺伝の話です。
発達障害と遺伝の関係について
先ほどちょっと触れましたが、発達障害は遺伝しやすい。つまり、発達障害に遺伝的要因が強く関係していることが、様々な研究から分かっています。
特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などの発達障害では、複数の遺伝子が関連している(ここ重要)ことが報告されています。
しかし、遺伝要因だけでなく、環境要因も発達障害の発症に重要な役割を果たしています。
現代科学の理解だと、遺伝要因と環境要因が複雑に相互作用し、発達障害の発症に影響を与えていると考えられています。
一旦まとめますが結論、
遺伝の関係は大きいが、環境(お住まい環境・時代など)の影響も受ける!
ということになります。
また、発達障害が親から子どもに遺伝する確率については、現時点で明確な数値は示されていません。
一部、過去の研究などでは、これくらいの%!って数字があるのですが、実際、「遺伝子×環境」での計算が複雑な部分も多いので、
一概に子が発達障害だから、親も発達障害とは言いづらい感じです。
ただし、再度になりますが「遺伝子」からの影響や、「環境」からの影響はあるのは間違いないので、
「遺伝子×生育環境」によっては、発達障害となる可能性もある。と言えそうです。
近年の研究では、遺伝子が特定されている部分もある
遺伝子とか言われても難しいよな〜って思われかもですが、僕も遺伝子について、めちゃくちゃ詳しいわけではありません。
ただ、子供の生育にちょっときっかけになるかも?なので、一応、近年の研究で特定されている、発達障害(主にASD)に関与する遺伝子名を一部、紹介します。
- CHD8
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- 概要: 転写因子として働き、発達過程での遺伝子発現制御に重要な役割を持ちます。
- ポイント: 変異があると、ASD特有の表現型(例:顔貌の特徴や知的発達への影響)と関連していると報告されています。
- SHANK3
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- 概要: シナプスの構造と機能に関与する足場タンパク質で、シナプス後部密着複合体の形成に重要です。
- ポイント: 欠失や変異は、ASDだけでなく、精神遅滞や他の神経発達障害とも関連付けられています。
- NRXN1(Neurexin1)
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- 概要: シナプス前細胞で働く接着分子で、神経細胞間のシナプス形成に寄与します。
- ポイント: 遺伝子の欠失や変異がASDリスクの増大と関係していることが複数の研究で示されています。
- NLGN3/NLGN4(Neuroligin3/4)
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- 概要: シナプス後部に局在するタンパク質で、ニューロン間の適切なシナプス接続に関与します。
- ポイント: これらの遺伝子の変異は、ASD患者や関連症状を呈する家族で見られることがあり、シナプスのバランス調整の乱れが示唆されています。
- SCN2A
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- 概要: 電位依存性ナトリウムチャネルをコードする遺伝子で、神経細胞の興奮性に影響を与えます。
- ポイント: 変異はASDだけでなく、てんかんなどの他の神経疾患とも関連しているとされ、神経回路の興奮と抑制のバランスに影響を及ぼす可能性があります。
- CNTNAP2
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- 概要: 神経細胞の膜タンパク質で、細胞間の相互作用や神経回路形成に関与します。
- ポイント: 特に言語や社会性に関連する機能の発達に影響を与える可能性があり、ASDリスクと関連づけられています。
- DYRK1A
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- 概要: 細胞増殖や神経発達に関わるキナーゼで、脳の発達過程に影響を与えます。
- ポイント: 変異があると、ASDおよび知的障害と関連する症状が現れる例が報告されています。
- SYNGAP1
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- 概要: シナプスのシグナル伝達に関与するタンパク質で、シナプス可塑性の制御に重要です。
- ポイント: 変異は神経発達障害全般、特にASDや知的障害と関連しているとされています。
自閉スペクトラム症の遺伝学は近年、急速に進んでおり、新たな候補遺伝子などが、日々明らかになっています。
より自閉スペクトラム症に関連する遺伝子を調べたい場合は、
スタンフォード大学やシモンズ財団などが運営する SFARI Gene データベース に多くの候補遺伝子がリストアップされているのでチェックしてみてください。
またこれらの遺伝子は、一つの遺伝子の影響だけで、自閉症になるわけではありません。
実際には、それぞれの遺伝子が、一つひとつではあまり影響がない場合でも、たくさん集まると影響が大きくなることがあります。
また、すごく大きな影響を持つ特別な変化(例:遺伝子が増えすぎたり、形が変わったりするなど)が起こる場合もあり、これが自閉症の原因になることもあります。
なので、たった一つの原因や遺伝子で自閉症になるわけではない!って感じです。
自分たちに何ができるのか?
正直、遺伝子(DNA)は変えることが難しいです。
基本的に、僕たちのDNAは受精のときにほぼ決まっており、その後は大きく変わることはありません。
ただ例外的に、体細胞変異という、がんなどでみられる体の細胞で起こる突然変異は後天的に起こる可能性もありますが、
基本的に遺伝子(DNA)は、後から変えることができない。のです。
ただし、実は遺伝子には「オン」になったり「オフ」になったりする、いわばスイッチのような仕組みもあります。
これをエピジェネティクスと呼びます。
エピジェネティクスでは、DNAそのものの塩基配列は変わらなくても、どの遺伝子がいつ、どの程度働くかが調整されています。
詳しく説明すると長くなるので、必要な方は調べてみてほしいですが、
このエピジェネティクスは、僕たちの「食生活」「ストレス」「環境中の化学物質」などの影響を受けるそうです。
また、様々な発達に関する研究データの中で「睡眠」はかなり重要だと結論づけられていますし、
それらを統合すると、
本人の食生活を気をつけ
ストレスを受けても、長く残らないような環境で過ごし、
できる限り、良い睡眠をとる
ということ(化学物質は今回は難しいので除外)が、大事なのではないかな?と思います。
プラス、運動できればさらに良し!ですね(笑)
遺伝子は変えられないけど、僕たちが変えられる部分を変えていくことが大事だと思います。
まとめ
本日は、「親の自分も発達障害なのではないかと思っている。発達障害は遺伝するの?」というテーマで話しました。
僕らは誰しも発達障害のような特徴や行動傾向を持ち合わせていますが、それらは日々の努力で少し改善する可能性は高いです。
それでも上手くいかないってこともあるのが発達障害児の療育ですが、
それを親の自分のせいとか、
教えている自分のせいだとは思わないでほしいですね。
ちょっと冷たいかもですが、本人が成長できる可能性は、本人の中にしかないわけですから、周りにいる大人はそれをサポートすることに専念しましょう。
一応、自分がもし心配なら病院(発達障害の外来がある病院)で検査もおすすめですし、話し相手や自己実現は僕も相談支援をしているのでサポートしますよ!

親も頑張る。子も頑張る。周りも頑張る。
そんな感じで本日は遺伝の話でした。
本日もありがとうございました。