知的障害の根本の問題は実行機能の問題かも(抑制・シフト・ワーキングメモリー、時間感覚など)
こんにちは、ゆうです。
今日は「知的障害の根本は実行機能の問題」というテーマでお話していきたいと思います。
教室で静かに座っているんだけど実は色んなことができていない子供、何回注意されても同じ失敗を繰り返してしまう子供、頑張っているのに結果が出ない子供。
こういった子供たちを見て「努力不足」「性格の問題」と思ってしまう方もいるかもしれません。でも、それは全然そういうわけじゃなくて、元々の脳機能にちょっと問題があるという見方をすることがすごく重要かなと思います。
特に軽度知的障害の場合、人を叩いたり噛んだりしない子供だと困りごとが見えにくい部分もあるんですよね。なんだけど、本人は実はすごく困っている。今日はそんなお話を深掘りしていきます。

結論を先に言うと、軽度知的障害の本当の困難は「実行機能」という脳の働きにあるということ。思考が遅いのではなく、いつ・何を・どうするかを決める仕組みそのものが揺らぎやすい状態なんですね。この視点を持つだけで、子供の行動の見え方が大きく変わります。
IQだけじゃない — 3つの適応領域で判断する時代へ
まず前提として知っておいてほしいのが、最近の知的障害の診断基準が変わってきているということです。昔は知的障害といえばIQの数値で単純に判断していました。
低ければ知的障害、高ければ違うよと。でも最近では、3つの適応領域を組み合わせて、実生活で困りごとが強い場合に知的障害と診断されるようになっています。
概念的領域 — 抽象的な思考の壁
1つ目が概念的領域です。例えば、リンゴが3個、ミカンが2個あって合わせていくつですか?と聞くと、軽度知的障害のある方でも答えられるんですよ。
5+3=8みたいな、式になっていればできる。ただ、難しいのが「AさんはBさんより3個多いです」みたいに関係性を扱う問題になってくると、ちょっと思考が追いつかないってところが出てきます。
算数っていうのは抽象的な思考を育てるために学んでいく教科ですよね。
具体的な数字の計算はできるんだけど、抽象的な物事を扱うのが苦手。これが概念的領域の苦手さかなと思います。
社会的領域 — 言葉の裏を読む難しさ
2つ目が社会的領域です。例えば友達が「いいなあ、それ楽しそう」と皮肉混じりに言った時に、言葉の裏にある気持ちを汲み取るのが難しいんですよね。
その状況で単純に喜んじゃうと、ちょっと火に油な感じがしますよね。
これはASD傾向のある子供たちもそうなんですけど、表情とか声のトーンとか、非言語情報を統合する力がちょっと弱い。
空気が読みづらいってところがあります。子供たちの年齢が上がるほど仲間うちでつるみたいという気持ちも出てきますし、相手のちょっとした表情の変化に気づくことが重要になってくる。
そういった場面で社会的領域の苦手さが出やすいかなと思います。
実用領域 — 段取り力の苦手さ
3つ目が実用領域です。一言で言うと段取り力ですね。
例えばお母さんが「着替えて、歯を磨いて、ハンカチをカバンに入れといてね」と朝の支度で3つの指示を一気に出した場合、最初の着替えだけはできるんだけど、その後の指示が頭からポーンと消えちゃって、パンツ一丁のままテレビ見てるとか。
お風呂上がりにすっぽんぽんでテレビの前にいるとか。
生活って本当は色んな段取り力が必要じゃないですか。複数の手順を計画することも苦手だし、優先順位をつけることも苦手だったりする。
日常のルーティン作業でさえ結構考えないとできない。これが実用領域の苦手さに繋がっているかなと思いますね。
軽度知的障害の正体は「実行機能」の問題
さて、この3つの適応領域をふまえて、軽度知的障害の正体って何なのかというところを言うと、結論、実行機能の問題があるから色んな行動がうまくいかないんですよね。
軽度知的障害はIQの数値だけで語られる時代を終えました。本当の困難は目標に向かって行動を調整する制御システムの不全にあります。
中心にあるのは実行機能と呼ばれる脳の働きと、それと密接に繋がる内部クロックです。思考が遅いのではなく、いつ何をどうするかを決める仕組みそのものが揺らぎやすい状態。
この視点を持つだけで、子供の行動の見え方が大きく変わります。
パソコンに例えるなら、OSそのものがフリーズしやすい状態と言えるかもしれません。
アプリを1つ開くのにも時間がかかるし、複数のアプリを同時に動かそうとするともう固まっちゃう。でもOSが安定して動く環境を整えてあげれば、ちゃんとアプリは動くんですよ。
実行機能の3本柱 — 抑制・シフティング・ワーキングメモリ
じゃあ実行機能って何なのかと言いますと、一言で言うんであれば物事を達成する力です。
スタート地点からゴールまでの間に色んなことがあるんだけど、最終的にそこをうまく制御してゴールまで行き着く力ですね。で、その中核になるのが次の3つです。
① 抑制 — 認知のブレーキ
目の前の魅力的な刺激に飛びつきたい衝動を、目標のために止めるブレーキ機能です。お菓子があったら食べたくても我慢する、授業中に校庭に犬が入ってきても勉強に集中する、そういった力ですね。
研究によると、知的障害のある子供はこの葛藤の処理にタイムラグが起きやすいと言われています。
普通ならお菓子を見て「食べていいのかな?」と思考を1回挟むんだけど、その思考が挟まる前に先に手が動いてしまう。
もしちょっと待てたら考えることができるのかもしれないけど、反応にラグが起きやすくてなかなか抑制が効かないんですよね。
② シフティング — 切り替える力
1つの考えやルールから別なものへと柔軟に切り替える能力です。ご飯を食べなきゃいけないのにテレビに集中しちゃって切り替えられないとか、一度覚えたパターンから離れることが難しいとか。
これって、古い回路と新しい回路が同時に立ち上がっちゃう感じなんですよ。普通だったら1から2にトンと移動できるんだけど、知的障害がある場合には1と2が同時に動いちゃって干渉してしまう。
この切り替えにすごくエネルギーを使うから、結局もともと知っていて安心できるものの方に行きやすいんですね。
③ ワーキングメモリ — 心の作業机
必要な情報を一時的に保って、並び替えたり統合したりする機能です。
これから出かけるよって時に、必要なものはこれとこれで、まずこれをやって、次にこれをやって…と情報を覚えた上で順番にこなしていく力ですね。
知的障害がある場合、この心の机が元々小さいとも言えます。情報をとりあえず全部乗せちゃうと机の容量がいっぱいっぱいになって、本当に必要な情報が机から落っこちちゃう。
何をどういう風にっていう作業工程を作ることが難しくなるんですよね。やることやることが全て「初めまして」状態になってしまうこともあるかなと思います。
最新の研究では、軽度知的障害の子供は一度覚えたルールをなかなか捨てるのが難しいと出ています。
これもワーキングメモリで情報を比較することが苦手で、シフトもしづらいから、自分が元々知っているものを選び続けてしまうわけですね。
性格の問題じゃなくて、脳が元々持っているフィルター機能が働きづらい状態だから、本人を責めてもちょっとしょうがないところがあるよと。
時間感覚の歪みと記憶の検索つまずき
実行機能の3本柱に加えて、もう2つ知っておいてほしいポイントがあります。
内部クロック — 僕らの5分と彼らの5分は違う
僕らにとっての5分が、知的障害のある子にとっての5分と全然違うらしいんですよ。
軽度知的障害の場合、時間感覚に約1.6倍のばらつきがあると言われています。
お母さんが「すぐやって」と言った時、お母さん的には5秒後にやりなさいなんだけど、本人にとっては「すぐ」が5分後くらいの感覚になってる可能性もあるわけですね。
療育施設でよくタイマーを使おうねって言うんですけど、保護者の方に提案すると「時計で遊んじゃう」「音が過敏でダメ」と言われることも結構あります。
特に自閉傾向がある子の場合はそうですね。なんだけど、なぜやるかというと、時間の感覚が掴みづらいから、視覚的に「このくらいで終わる」と分かった方が正確に物事を達成しやすいからなんです。
記憶の検索エンジンがうまく働いていない
脳にはどこかに情報をストックする場所があるんだけど、知的障害がある場合にはそこからすぐに情報を引き出すのが難しいと言われています。
記憶がスパッと出せたら計算でも何でもいいですよね。でも、なかなか思い出せない、タイムラグがある。
「昨日も言ったでしょ」「前も言ったでしょ」と怒られても、それを思い出すまでの時間が長いから、考えていないように見えちゃう。
でもそれは記憶の検索エンジンがうまく働いていないだけなんですよね。怒られた時にポカーンとしてるのも、まさに今怒られてる状況と過去の記憶をパッと結びつけられないからなんです。
知能が高い脳は「省エネ」で動いている
ちょっと面白い話なんですけど、知能が高い場合は必要な脳の領域だけを最小限に動かすことができるんですね。
見る時には見る部分だけに集中して他は抑制する。終わったらスパッとシフトして次のことを工程化する。ワーキングメモリも十分に働いてリアルタイムでどんどん更新できる。記憶との連動も良い。
つまり「使う場所だけ使う」ができるんです。WindowsのパソコンでもMacでも、軽いアプリだけ立ち上げてサクサク動く状態と、重いアプリを10個同時に開いてフリーズしてる状態って全然違いますよね。
知的課題がある場合は、頭の中で全部使っちゃってエネルギーがものすごい状態になっている。脳をフル稼働させてるから、かなり疲れやすいんですよ。
小学校の低学年くらいまでは頑張れても、高学年くらいになるとバーンアウトしてしまうことも起こります。
そんな脳が必死に頑張ってる状態に新しい情報をボーンとぶち込まれると、もう「無理です」ってなっちゃう。だからこそ、習慣化して脳の負担を極力減らすことがすごく重要になるわけです。
実行機能を補うための具体的サポート
じゃあどうすればいいのかっていう話ですね。療育施設で行っている色んな取り組みって、一言で言うとこの実行機能を補うためにやっているんです。
環境の構造化 — 脳の補助をしてあげる
「片付けなさい」だと、何がどうだか脳の検索がうまくいかなかったり、片付け途中に違うものを見つけちゃったりする。
でも例えば絵カードを渡して「これを取ってきて、これを片付けて」とやれば、できたりするんですよね。
- 絵カードで視覚的に指示を出す → ワーキングメモリの補助
- 順番に並べて提示する → シフトしやすくなる
- 無駄な刺激を減らす → 抑制が働きやすくなる
- タイマーで時間を可視化する → 時間感覚のズレを補う
- 聴覚情報を視覚情報に置き換える → 記憶の検索を助ける
極力、聴覚情報から視覚情報の世界に移して、感覚的にできるものに落とし込んでいく。これだけでできることが格段に増えるって感じですね。
スモールステップと成功体験の積み重ね
環境を整えた後に大事なのが、スモールステップ式になっているかどうかです。「学校の準備をしなさい」だとやっぱり難しい。
これを細分化して「学校の準備リスト:教科書、筆箱…」と書いておく。で、1個ずつ達成したら具体的な褒め言葉やシール(トークン)で小さな成功を強化していくんです。
頑張ってやっていたことも、習慣づいてしまえば頑張らなくてもできるようになる。ただ、いきなり全部やってって言うと負担が大きいから、必ず小さく分解してからやるのがすごく重要です。
そして最終的には成功の味をしっかり知ってもらうこと。失敗した時に「あの成功をするためにはこうしなきゃ」と思えるようになると、自己規律ができやすくなりますからね。
運動が実行機能を伸ばす — 2024年の研究から
色々言ったけど、「結構色んなこと考えるの難しいな」って方もいますよね。そんな時に朗報なのが、2024年の研究で運動スキルと実行機能に強い相関があることが示されたんですよ。
僕も最近、自分の療育に運動を結構取り入れてるんですけれども、バランスを取りながらボールを投げるとか、ルールに従ってステップを踏むとか、体を動かしながらできるのがすごくいいなと感じてます。
何より子供って体を動かすのが楽しいじゃないですか。
特に10歳以下の児童期に関しては、運動と勉強を両輪で回していくことがすごく重要だと思います。勉強をいっぱいやるよっていうよりは、運動をたくさんして、しかも単一な運動だけじゃなく、ちょっとずつ複雑にしていく。
走るだけから鬼ごっこになって、鬼ごっこからサッカーになるみたいな流れがあると一番いいのかなと思いますね。
まとめ:行動の理由を「実行機能」から理解しよう
今日お伝えしたかったのは、知的障害、特に軽度知的障害の困りごとの根っこには実行機能の問題があるということです。
抑制・シフティング・ワーキングメモリという3本柱、そして時間感覚の歪みや記憶の検索つまずき。これらが絡み合って、色んなことがうまくできない状態になっているんですね。
軽度知的障害のお子さんは、学校で嫌なことがいっぱいあったり、友達の輪にうまく入れなかったり、本当に大変なことがたくさん起こります。
そして本人たちもそれなりに自分のことが分かるから、すごく傷ついたり苦しくなったりする。共感的に寄り添ってあげることも大事だけど、なぜそうなってしまったのかを1つ1つ分解して、うまくいく生活動線にしていってあげること。
視覚提示や時間管理など結構シンプルなことなんだけど、そこをしっかりやっていくことが療育としてはすごく重要かなと思います。
もしお子さんの行動に悩んでいる方がいたら、どうか自分を責めないでくださいね。「この子の脳はどこで頑張りすぎているんだろう?」という視点で見てあげるだけで、きっと関わり方が変わってくると思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう。皆様よき療育ライフを。

