支援者が行う上手な伝え方を解説|子どもの発達障害や知的障害。特別支援や療育。

こんにちは、ゆうです。

「子どもがなかなか課題に取り組んでくれない」「こちらの指示を聞いてくれない」と感じたことはありませんか。

そんなとき、イライラして「ちゃんとやって」を繰り返してしまうと、子どもも大人も疲れてしまいますよね。

実は、伝え方を少し工夫するだけで、子どもが「やってみよう」と前向きになることは本当に多いんです。

今日のテーマは「伝え方」です。ただ、今回はいつもと少し切り口を変えて、「どんな状態なら”伝わっている”のか、どんな状態だと”伝わっていない”のか」を見分けるところから始めます。

そのうえで、つまずいている場所に合った手法をピタッと当てていく。この順番で考えると、闇雲に言い方を変えるより、ずっと効率よく「伝わる」に近づけますよ。

目次

そもそも「伝わる」ってどんな状態?

「伝える」と「伝わる」は違います。こちらが言ったつもりでも、相手が動けていなければ「伝わっていない」んですね。

実は、指示が相手に届いて行動になるまでには、次の5つの段階があります。このどこか一つでも切れると、「伝わらない」が起きます。

STEP
気づく

こちらが話しかけていることに注意が向く

STEP
受け取る

言葉が音として聞こえている

STEP
わかる

何をすればいいか意味が理解できる

STEP
やる気になる

「やってみよう」と納得できる

STEP
行動に移す

実際に体が動き、最後までできる

この段階を知っておくと、「伝わっているかどうか」を子どもの様子から読み取れるようになります。目安はこんな感じです。

伝わっているサイン

  • 手が止まって、こちらを見る/目が合う
  • 「何するんだっけ?」の問いに答えられる(復唱できる)
  • 質問してくる(「これはどこに置くの?」など)
  • 行動が始まる・最後までやりきれる

伝わっていないサイン

  • 反応がない・遊びに夢中で顔を上げない
  • 「うん」と生返事だけで動かない
  • 固まる・違う行動をする・途中で止まる

大事なのは、「聞いていない」と決めつけないことです。

動かないのは反抗ではなく、5段階のどこかで引っかかっているサインかもしれません。まずはどの段階でつまずいているのかを見てあげましょう。

【診断表】どの段階でつまずいている? 手法はこれ

ここが今日の中心です。5段階のどこで止まっているかによって、効く手法は変わります。子どもの「伝わっていないサイン」から、当てる手法を選べる早見表にしました。

スクロールできます
段階伝わっていないサイン効く手法
① 気づく反応がない、遊びに夢中で顔を上げない名前を呼ぶ、軽く肩に触れる、目線を合わせてから話す
② 受け取る聞き返す、ざわつくと従えないテレビを消す、静かな場所で、近くで一対一で話す
③ わかる「え?」と固まる、違うことをする短く具体的に、一度に一つ、やって見せる
④ やる気になるわかっても動かない、「やだ」と言う好きを入り口に、「○○したら△△」、肯定形で伝える
⑤ 行動に移すやり始めるが続かない、途中で止まる最初の一歩を一緒に、区切りを示す、できたらすぐ褒める

たとえば「返事はするのに動かない」なら、

つまずきは④の「やる気」か⑤の「行動」であって、いくら大きな声で言い直しても(①②の手法をいくら足しても)伝わりません。

逆に「そもそも顔を上げない」なら、まず①の注意を向けるところからです。

手法を足す前に、段階を見きわめる。これが遠回りに見えて一番の近道なんですよ。次からは、この表の手法を具体的に見ていきますね。

手法①:注意を引いてから、短く具体的に

まずは段階①〜③、「気づく・受け取る・わかる」への手法です。

子どもが他のことに夢中なとき、いきなり指示を出しても気づきません。名前を呼ぶ・軽く肩に触れる・目線を合わせるで「今から話すよ」のサインを送り、聞ける状態をつくってから伝えます。

お母さん

Aくん、ちょっといい?

このように「Aくん、ちょっといい?」と一度受け止めてもらってから本題に入る、というワンクッションですね。ざわついているならテレビを消す、近くで話す。②の環境も整えてあげましょう。

そして③の「わかる」を助けるのが、短く・具体的にです。あいまいな表現や長い説明は理解を妨げます。

伝わりやすい言い方(GOOD)

お母さん

青い本を机の右側に置いてね

お父さん

おもちゃを箱に入れて、ふたをしてから棚に戻してね

伝わりにくい言い方(BAD)

お母さん

ちゃんとしなさい

お母さん

きちんと片付けて

デコくん

???(何をどうすればいいか分からない)

「ちゃんと」「きちんと」は、大人には分かっても子どもには何のことか分かりません。

「何を・どこに・どうする」まで言葉にしてあげると、「なるほど、こうすればいいんだ」と動けるようになります。言葉だけで難しければ、一度やって見せるのも強力です。

もう一つ、③⑤で効くのが「一度に一つ」です。一気にいくつも指示すると、途中で分からなくなってしまいます。

  • BAD:「青い本を机に置いて、赤いノートをしまって、色鉛筆もまとめて…」(混乱する)
  • GOOD:「まず青い本を机の右に置こう」→ できたら「じゃあ次は赤いノートをしまおう」

一つできてから次へ。一回につき一つの指示と覚えておくといいですよ。

手法②:肯定形で、好きを入り口に

次は段階④、「やる気になる」への手法です。ここが切れていると、意味は分かっていても体が動きません。まず効くのがポジティブな(肯定形の)言い方です。

否定形は「何をすればいいか」が入っておらず、責められた感じだけが残りやすいんですね。肯定形に変換すると、命令ではなく提案として受け取ってもらえます。

スクロールできます
否定形(伝わりにくい)肯定形(伝わりやすい)
走らないでゆっくり歩こうね
やめなさいこっちに注目/静かにできるかな
ダメこうしようね
騒がないでお口を「シー」しようね

もう一つ、やる気の入り口として強いのが好きなもの・メリットを添えることです。

「今からお片づけしたら、トミカで遊ぼう」「この問題が解けたら、大好きな昆虫図鑑を見よう」というように、先の楽しみとセットにする。

以前の記事でお話しした「○○したら△△」の言い方ですね。

「これって幼児向けでは?」と思った方もいるかもしれません。でも、これは小学生も中学生も大人も同じなんですよ。

人間は「知っているもの」「好きなもの」「メリットがあること」ほど、耳に入りやすいという特徴があります。だから年齢に合わせて「勉強が終わったら、一緒にゲームしよう」のように変換すれば、そのまま使えます。

伝わりやすさの原理は、いくつになっても変わらないんですね。

「伝わったか」を必ず確かめる

「より伝わる」を目指すうえで、意外と抜けがちなのが「伝わったかどうかの確認」です。

言いっぱなしにせず、相手に届いたかを確かめるところまでが「伝える」だと考えてくださいね。やり方はかんたんです。

  • 復唱してもらう:「今から何するんだっけ?」と聞いて、言えたらバッチリ伝わっています
  • 最初の一歩を見る:動き出せるかで、④⑤まで届いたか分かります
  • 表情を見る:ぽかんとしていたら③でつまずいているサイン。言い方を変えます

確認して「伝わっていなかった」と分かるのは、失敗ではありません。どの段階でつまずいたかが分かる、大事な情報です。そこにさっきの診断表の手法を当て直せばいいだけ。

この「伝える→確かめる→当て直す」の小さなループが回り出すと、伝わる確率はどんどん上がっていきますよ。

まとめ:段階を見きわめれば、伝わる

今日は、子どもに「伝わる」伝え方について、いつもと切り口を変えてお話ししてきました。ポイントを振り返っておきますね。

  • 「伝わる」には5段階(気づく→受け取る→わかる→やる気→行動)ある
  • どの段階でつまずいたかを子どもの様子から見きわめ、合った手法を当てる
  • 伝わったかを確かめて、ずれていたら当て直す

子どもがなかなか動かないと、つい苛立って叱ってしまいがちです。でも、ほんの少し伝え方を変えるだけで、子どもは驚くほど反応を変えます。

「気づいていないのかも」「言葉が難しいのかも」「そもそもやる気の段階かも」と、段階に分けて考えてみてください。

最初は思うようにいかなくても、やってみて振り返り、少しずつ改善していけば、「これで伝わる」という感覚がつかめてきます。

焦らず、一つずつ。子どもとのやりとりがスムーズになると、お互いの笑顔もきっと増えていきます。

もし今、うまく伝わらなくて疲れている方がいたら、どうか自分を責めないでくださいね。あなたはもう、十分がんばっています。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

また次の記事でお会いしましょう。皆様、よき療育ライフを。

ゆう先生
相談支援員・児童発達支援員
富山県富山市で児童発達支援、学習支援、相談支援などを行なっています。またYouTubeやInstagramなどでも療育のアレコレを発信中。
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