発達障害は治るのか?|治らないけど「改善できる」という希望の話
こんにちは、ゆうです。
今日は、療育施設でもよく聞かれる質問「発達障害って治るんですか?」というテーマについてお話ししていきたいと思います。
結論についてはもう知っている方もいるかもしれません。ただ今日は、少し側面を変えてお伝えしていきます。

治るか治らないかと言ったら、あえてはっきり言うのであれば治らない。でも、改善はできるかもしれない。今日はそんなお話です。
現代の科学的な視点から見た「治る・治らない」
やっぱり現代の科学的な視点で見たときに、発達障害の脳というのはちょっと複雑です。
脳自体もまだ完全には解明されていないし、脳の配線や特性そのものを完全に入れ替えたり消し去ったりすること、つまり「完治」できるのかと言われると、正直なかなか難しいのかなと僕は感じています。
でも、ちょっと絶望しないで欲しいんです。スタートラインこそ悲しい話になっちゃうけど、ここを抜けたら結構前向きな話もたくさんあるので、ぜひ最後まで読んでください。
脳の仕組み自体は変えられないけれど、機能的な適応はできるかもしれない。
生まれ持っているもの(先天的なもの)を大きく変えることはできないけれど、後天的に自分により良い環境を選んだり、いろんなことを学んでいったりすることで、発達障害の傾向を抑えられる可能性はあるんです。
「オプティマルアウトカム」という希望
診断基準を満たさないほど社会に馴染んで、自分らしく生きている状態のことを「オプティマルアウトカム(最良の結果)」と言うそうです。
僕も今回初めて知った言葉なんですが、AIの発達で海外の論文を漁り始めるといろんな言葉が出てくるなと感じています。
ただ現実問題、社会に馴染むことができているだけであって、発達障害の傾向がなくなったわけでも、特性自体が消えたわけでもありません。これはいわゆる「攻略法をマスターした状態」かなと思うんですね。
ゲーム的な感じで、自分自身がコントローラーを持って、ちょっと上手に動かせるようになってきた。そんなイメージです。
特性はなくならない。でも、無理に定型発達を目指すんじゃなくて、自分に最適化していく。ここがすごく重要なんです。
だから、診断を受けたからって人生がおしまいだなんて考えなくていい。
むしろそこからがスタート。自分はこういう使い方になりそうだから、こうしていこう。お子さんに関しても、こういう傾向が出るからどうしようか。
そんなふうに前向きに考えてほしいなと思っています。
※なお、今日の話は発達障害をメインにしたお話なので、知的障害が併存する場合は少し様相が変わってくる点はご了承ください。
発達障害が苦手な3つの認知機能
治るか治らないかの話をする前に、発達障害ではどんなところが苦手なのかを少しおさらいさせてください。
① 心の理論——相手の気持ちを読む力
特に自閉傾向のある方は、相手の心を読むことがちょっと苦手だと言われています。僕たちが誰かと話したり関わったりするとき、無意識に「相手は今こう考えてるかな」「あ、これは冗談だな」と推測しながら会話しますよね。この機能を心理学では「心の理論」と言います。
定型発達の人は雰囲気や文脈で「言わずもがな」を直感的に掴むのがすごく得意です。でも自閉傾向のある方は、情報を「点」で捉えるのは得意だけど、それを繋いで全体像にする「線」や「面」で考えるのが苦手というところがあります。
たとえばりんごを見たとき、「赤くて丸い果物」とまとめるよりも、「ヘタの形が独特だな」「表面の斑点がたくさんあるな」という部分に注目しちゃう。こういう細部に強烈に目を奪われてしまう結果、対人関係のやり取りが苦手になることがあるんです。
これが「空気が読めない」と誤解される原因になるんですが、性格の問題じゃなくて、元々持っている脳の情報統合の仕方が定型と違うから起きてしまう現象なんですね。
自閉傾向のある方には、見えないルールを目で見て分かるようにしておくこと、そして論理的に知識として体系化して覚えていくことが有効です。直感では分からなくても、頭でまず理解させるというアプローチを目指すと結構うまくいきます。
② 実行機能——脳の司令塔
実行機能とは、計画を立てたり、感情をグッと抑えたり、優先順位を決めて物事を整理する力のことです。「脳の司令塔」なんて言い方もされますね。
特にADHD(注意欠如多動症)の特性を持っているお子さんの場合、この司令塔の働きが少し不安定になりやすい傾向があります。
イメージとしては、司令塔がちょっと休みがちで、風邪を引きまくっている感じ。パソコンに例えるなら、たくさんの情報を入れすぎてフリーズしてしまうような状態です。
やりたいことを我慢できずに飛び出しちゃったり、段取りが組めなくて宿題に手がつかなかったり——これは決して本人のやる気がないとか、しつけのせいじゃなくて、元々そういうことが苦手だから脳がものすごくエネルギーを使ってしまうんです。
さらに実行機能に弱さがあると、予測不能な状況が非常に不安に感じられます。見通しが立たないことへの不安が強くなるんですね。
結果として、ASD のお子さんはいつもと同じ手順に固執して脳の負担を減らそうとしますし、ADHDのお子さんはケアレスミスが増えたりします。
対策としては、タスクを小分けにすること、視覚的なツールを使うこと、そして環境調整をしてあげることで少し楽になります。
③ 中枢統合
3つ目は中枢統合です。「こういうことだよね」と全体をまとめて理解する力が少し弱いというところ。
この3つ——心の理論・実行機能・中枢統合が特に発達障害で苦手と言われている認知機能の部分になります。
OSは変えられないけど、アプリはインストールできる
ここからが今日の本題です。
発達障害の特性をパソコンのOSに例えると分かりやすいと思います。世の中の多くの人がWindowsを使っているとして、発達障害の方はMacやAndroidなど、異なるOSを積んで生まれてきていると思った方がいい。
このOS自体を後からWindowsに入れ替えたいなと思っても難しい。MacはWindowsになれないし、WindowsはMacになれない。OS自体は変えられない。まずこれは理解しておくことが大事です。
でも、ここからが超大事なところ。OS自体は変えられなくても、その上で動くアプリケーションはインストールできるんです。
先天的なOSは変えられない。脳は変えられない。でもインストールするものによっては、自分が生きやすくなったり、生活がしやすくなったりする可能性がある。
たとえば忘れ物をしやすいOSなら、スマホのリマインダーみたいなアプリを使いこなせばいい。他人の感情が読みにくいOSなら、表情や感情のパターン集みたいなアプリを自分の中に構築していけばいい。
だから療育というのは、本人たちが分からないことが分かるように支援していくことが重要なんです。脳の特性、特に苦手なところに関しては障害が続くかもしれない。
でもそれをサポートする新しい能力を身につけていく。弱点をプラマイゼロにしていく。この考え方で色々なことをやっていくのが大切です。
親御さんは、周りがWindows使っているからWindowsの方がいいかなと思っちゃうことがあると思います。
当事者本人さんも、Windowsの方が使いやすいよねって思っちゃうかもしれない。でもMacにはMacの良いところがある。その素晴らしいところをうまく使っていくのが重要なんです。
ちなみに僕が使っているパソコンはMacです。そして自分の中にインストールされているのも、ちょっとMacかなと思いますね。
希望のデータ——オプティマルアウトカムの研究結果
実は、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けたお子さんのうち、数%から最大25%程度が、成人期には診断基準を満たさなくなるほど良好な適応を見せるということが分かっています。
特にコミュニケーション能力に関しては、定型発達の人と遜色ない力を発揮すると言われています。
「えっ、じゃあ治るの?」と思うかもしれないけど、ちょっと待ってください。治っているんじゃなくて、脳の可塑性、、、つまり脳が経験によって変化する力が働いた結果、粘り強い学習によって特性を補完する非常に強力な戦略やスキルを獲得したということなんです。
パソコンの話の延長線上で言うなら、自分専用の翻訳ソフトを手に入れた、攻略本を手に入れて攻略本通りに頑張ったらうまくいった。そんな感じです。
予後を左右する4つの鍵
じゃあ具体的にどうすればいいのか。社会生活に馴染みやすくなるための大枠4つの要素をお話しします。
鍵①:知能と初期の言語能力
IQ(知能指数)と早期の言語発達は、自分の特性を客観的に捉える上ですごく大きなアドバンテージになります。感覚的には分からなくても、頭で理解する。
でも頭で理解する前に言葉がうまく使えないと聞き取ることも難しい。だから幼少期に一番最初に獲得を目指すのは、やっぱり言葉なんだと思います。
もしここで「うちの子は言葉が遅いからダメなんだ」と思ってしまう方がいたら、自分を責めないでください。
言葉が使えないなら視覚的な支援や環境調整で行動を最適化させていく方法もあります。その子に合ったペースで、一つずつ積み重ねていくことが大切です。
鍵②:早期介入の質と量
僕はここをすごく重要だと、結構口酸っぱく言っているところです。脳が最も柔軟に作られるのは幼児期。脳の可塑性が一番高い時期に、適切な環境と刺激を与えてあげることが将来の自立に向けた土台になります。
療育で一番大事なのは、成功体験を積ませていくこと。途中に失敗があってもいい。でも最終的には成功するという感覚を身につけていく。
「もっとやりたい」「自分だったらできる」「自分だったらできた」。この感覚を療育では培っていくのが大事です。
特に幼少期にこれが大事な理由は、小学校に上がった後、本人たちは比較の中にずっとさらされ続けるから。自分のことを信じられている子と信じられていない子では、心の折れ方がまるで違います。
自己肯定感というとふわっとするかもしれませんが、僕が大事にしているのはどちらかというと自己効力感。「自分だったらできる」「自分だったら何とかなる」 。この感覚の方が重要かなと思っています。
鍵③:運動能力の成熟
僕は最近、運動をめちゃくちゃ推しています。運動推しです。
運動発達と何が関連性があったのかというと、実は社会性なんですよ。意外に思うかもしれませんが、体をスムーズに動かせるということは、脳内の情報伝達の効率性も高いということ。
対人関係のやり取りって、相手の微細な表情の変化を読んだり、会話の絶妙な間を読んだり、脳にとって非常に高度で運動的な調整が求められるんです。だからこそ運動がそのまま社会性の発達に直結する。
子供がブランコに乗ったり、ボールを追いかけたりする姿。実はそれが、将来誰かと一緒に笑い合うための大切な脳の配線を作っている状態なんです。
だからお父さんお母さんは、お子さんとたくさん遊んであげてほしい。関わることを避けちゃうとよりできなくなるから、うまくいかないことがあっても、関わり続けることが重要です。
鍵④:実行機能を高める
最終的にこれら全てを統合して、実行機能を高めるのがやっぱり一番重要です。大人になった後にいかに自分がうまく動いていけるかは、ここに集約されます。
たとえばASDの特性としてこだわりが強かったり感覚過敏があったとしても、実行機能が十分に働いている状態だと、自分の特性に合わせた計画や感情の抑制ができるようになります。選択肢を持つことができれば、日常生活での大きなトラブルは結構防げるんじゃないかと思います。
だからこそ、療育で一番大事なのは人生をどうやって動かしていくかを学んでいくこと。
忘れ物をしないためのチェックリスト、パニックになりそうなときの深呼吸。こういう習慣を歯磨きするレベルまで落とし込んでいく。
脳の力をあまり使わずにその習慣を身につけられれば、本人たちにとって楽な生活が待っています。
まとめ——配られたカードで勝負する
発達障害の特性自体がなくなるわけじゃない。これは申し訳ないけれど事実です。
でも、できることを増やして、困難を戦略でカバーしていく。これが今日一番伝えたかったことです。

僕たちが目指すのは、子供たちの特性を無理やり矯正して普通の枠にはめ込むことじゃない。MacのパソコンにWindowsのソフトを無理やり入れて壊してしまうようなことをしたいわけじゃない。
強みを伸ばして、弱みを戦略で補う。この現実的で前向きなアプローチをしていこうということなんです。
普通に見せることに固執してしまうと、本人たちの心を壊すかもしれない。普通を目指すんじゃなくて、本人たちが「生きやすい」「楽だな」「充実している」と感じられる、、、本人たちのオリジナルの価値観を見つけていくために、周りはサポートしていくのが重要なんじゃないかと思います。
自分のままでいいんだよ。本人は本人のままでいい。その上で、より良くするために今日お話ししたことを少しずつ実践していただければ幸いです。
診断名があるとか、治る治らないとかよりも大事なのは、自分が持っているカード——脳をどうやって生かしていくか。配られたカードで勝負するしかない。
だからこそ、その脳をうまく活用していく目線を大切にしてほしいと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう。皆様、良きライフを!

