こんにちは、ゆうです。
今日は「就学の判定と実態のズレ」について、いつもよりちょっと深掘った話をしていきます。
僕は児童発達支援と、小中学生の学習支援をしています。
その中で、就学のときに受けた判定と、学校に入った後の実態のズレって結構あるな、と感じているんですね。
特別支援学級に入れてみたけど、意外とできるから通常学級や通級の方がいいんじゃないかな。
逆に、通常学級に入ってみたけど、本人の困り感が強くて、本当は特別支援学級の方が良かったんじゃないかな。
療育の先生に「このクラスでいいんじゃない」と言われた通りにしたのに、小学校に上がったらなんかうまくいかない。
先に結論を言っておきます。
これは、保護者の選択の失敗でも、判定した人の怠慢でもありません。
判定という仕組みそのものが持つ限界から生まれる、構造的なズレなんです。

この記事では、ズレがなぜ起こるのか、学校現場は何を見てズレに気づくのか、気づいた後どう動くのかを、順番にお話しします。
なぜズレるのか:判定は「直接見ていない」ところで決まる
就学時健診のあたりで、通常学級なのか特別支援学級なのか、だいたいの教室が決まります。
お子さんの状況を見て、保護者の意見を聞いて、最終的には教育委員会が決定する形です。
ただ、ここで大事なことがあります。
教育委員会は、その子をその場ではっきり見たわけではなく、いろんな情報を総合して判断するんですね。
その判断材料の中心になるのが、心理検査です。
就学前の知能検査や発達検査は、心理師さんと1対1で、1時間くらいかけてやります。
初めての場所の子もいます。そういう場所が苦手な子もいます。大人と1対1の経験に慣れていない子は、結構緊張するわけですよ。
その中で測られるものなので、いつもの力が出せない子もいる。思ったより数値が低く出ることもあります。
だから僕も保護者の方には、「数値が低く出ても、気にしすぎない方がいいですよ」と話しています。
その日、その場で切り取られた場面の結果が、就学という大きなイベントのかなり大きな指標になる。
ここから、ズレが始まるんです。
検査室と教室は、別の世界です
検査室と教室は、別の世界なんですよね。
幼稚園までは、遊びが中心の生活でした。
それが学校に入ると、勉強という規格が決まっている中で動かなきゃいけなくなる。
人数は30人前後の集団。指示は一斉に飛んでくる。
友達関係、大人との関わり方。大人とだけ関わって、子どもと関わらない子も結構いるわけです。
こういうことは、1対1の検査だけでは測れないんですよね。
だから、こんなことが起こります。
数値がすごく高いから通常級でも大丈夫と言われたけど、感覚の特性が強くて、実は通常級ではない方が良かった。
逆に、数値上はあまり良くなかったから特別支援学級に入ったけど、意外と周りを見る目があって、「なんで僕はこの教室にいるんだろう」と感じている。
入学した後に学校の先生が「あれ、この子ここだと居づらそうだな」と気づいて、1年間本人も苦しんで、次の年に学級を移る。そういうこともあります。
学校に行った後に「行きたくないな」「なんか違うな」となるパターンは、まさに検査の情報と現実の乖離から来ている。これを覚えておくのはすごく重要かなと思っております。
数値は揺れるし、子どもは成長します
もう1個、検査そのものの話です。
就学相談で使われる検査は、田中ビネーとWISCが2大巨頭かなと思っています。
実はこの2つ、計算方法や比較する集団が違うので、同じ子でもIQが違って出ることがあるんです。大きい場合は10とか20とか。
田中ビネーなら80だったのに、別の検査なら100でした、となると結構大きな差ですよね。
だから、数字だけで判断しないことが大事です。
お父さんお母さんは、就学相談のときに検査結果を持っていくだけじゃなくて、「普段こういうことができますよ」をちゃんと伝えてください。
僕も、全く知らない子どもの情報を見るときは、まずペーパーの情報から見ます。それが先入観になるんですよね。だからこそ、紙の外の情報が大事なんです。
そしてもう1つ、僕がすごく大きい問題だなと思っているのが、時期です。
判定は、年長さんの秋ですよね。
でも、小学校に上がる頃までに、子どもは結構成長するんです。特に多動傾向のある子は、思うよりも成長する。
年中さんから年長さんの間に大きく伸びて、さらにその1年後には落ち着く子もいます。
それに、教科学習が始まって初めて見えることも多い。遊びの中では落ち着いていたのに、頭を使う活動に切り替わると安定しなくなる子もいます。
逆に、秋の時点では自信がなくて発言できなかった子が、規格の決まった学校の環境ではむしろ力を発揮できた、というパターンもあります。
幼児から学童へ。やることが全く変わるタイミングだからこそ、「秋に思ったこと」と「学校での現実」は少しずれていくのかなと思います。
制度は「ズレる前提」で作られています
ここまで聞いて、不安になった方もいるかもしれません。でも、いい話もあります。
実は、国も最初からズレを織り込んでいるんです。
就学時に決めた学びの場は固定せず、発達や適応の状況に応じて柔軟に見直せるように共通理解しましょう、という文言が制度に入っています。
だから、やり直せると思ってください。
この時期、本当に多くの保護者が「うちの子はどっちの方が人生良くなるのかな」と悩みます。
でも、昔と比べて今は変えやすくなっている。やり直しやすくなっている。これは間違いないので、ずれたら調整しましょう。
ただし1つだけ。「変えたいから1ヶ月後に変えてください」は難しいパターンが多いです。
だから、できる限り就学時に当たりをつけておくことも、やっぱり重要ですよ。
現場は数値ではなく「場面」を見ています
じゃあ、学校現場は何を見てズレに気づくのか。
学校に入った後は、数値じゃなくて場面で見られます。
IQがどれだけ高くても、友達とうまくできないなら「うまくできていない」という見方になる。数値から場面に、評価の軸が切り替わるんです。
ちなみに富山県には「先生が気づいて動けるチェックリスト」というものがあります。
生活場面ごとに30項目くらいあって、偏食があるか、当番を忘れるか、一人で下校できるか。そういうサインを拾っていく。
チェックがたくさん付く場合には、数値や申し送りだけじゃなくて「課題がありそうだな」と見るわけですね。先生たちは、目の前で起こっている生活の場面ごとに判断しています。
中でも大きいのが、一斉指示と個別指示の差です。
チェックリストにも「個別に言われると聞き取れるが、集団場面では難しい」という項目が明記されています。
1対1の検査では大丈夫。幼稚園で加配の先生がついていれば安定している。でも小学校で人がつかなくなった瞬間、聞き逃しが増えてミスが増える。
「ちゃんと聞いてたの?」と先生に言われて、心が疲れてしまう。集団の情報量がその子に合っているか、というところです。
これ、学力にも直結します。つまずきやすいタイミングは決まっていて、1年生の2学期は繰り上がり・繰り下がりと漢字の始まり。2年生の2学期は掛け算。3年生は漢字が多くて、3学期にはあまりのある割り算。
どれも夏休み明けなんですよね。一斉指示が聞けていない子が分からなくなりやすいポイントです。
そしてもう1つ、先生がよく見ているのが休み時間です。
友達の輪の中にいるだけじゃなくて、関わり合っているか。笑顔があるか。
みんなが鬼ごっこをやっている中で、一人だけ校庭の隅でアリと遊んでいる。そういう姿もあるわけです。
学力が高くても、授業を真面目に聞いていても、内側ではストレスを抱えているかもしれない。誰かが毎回誘ってくれているのか、自分から誘うこともあるのか。
これは心理検査の部屋で大人とやり取りしているだけでは、絶対に分からないことです。
だから逆算すると、幼稚園時代に見ておいてほしいのもここです。誰かと関わっている場面、一斉指示でみんなと動く場面。みんなと同じことができるかどうかを確認しておくと、「うちの子はこっちかな」の判断材料になります。
ズレの3つのパターン
ズレには典型的な3つのパターンがあります。
1つ目は見逃され型。IQが高いのに崩れるパターンです。
僕の周りにも結構該当する子がいます。IQは高い。検査のときはちゃんとできる。でも入学後、日常生活の中でイライラが募りやすかったり、集団の中で消耗したりする。
数値が高いことは、支援がいらない証明には全くなりません。
むしろ支援によって落ち着いて過ごせる場所を設けることで、本人の能力を最大限活かせるんです。
子どもって、モンシロチョウの幼虫がさなぎになって蝶になるみたいに、低学年と高学年と中高生でまるで変わります。蝶になる頃には、いろんなことができるようになる。だからこそ、その前の段階の生活習慣づくりでつまずかせないことが大事なんですね。
2つ目は埋もれ型。静かに困っているパターンです。
特に境界知能。IQ70から85の子どもは、30人の学級なら4人くらいいます。
見た目は普通で、受け答えもできて、いい感じに笑う。「のんびりな子」「面白い子」と思われる。でも実際は、勉強が全然できていなかったり、困りごとを抱えていたりする。
言い方は良くないですが、先生にとっては都合がいい子でもあるんです。ニコニコしてくれるし、先生は困らない。
でも本人のためになっているかというと、全くなっていない。学ぶ機会が少ないまま大人になって、困りごとが増えてしまうこともあります。
お家でできる確認としては、少し遠くから「〇〇ちゃん、ご飯だよ」と呼んでみて、反応するかどうか。反応がゆっくりに感じる場合は、少し丁寧に見てあげてほしいなと思います。
3つ目は見えない型。学校ではいい子なのに、家で大爆発するパターンです。
これは僕自身、一番の課題だなと思っていることでもあります。僕の療育を受ける子って、僕と仲良くなってくれて、僕の前ではいい子ちゃんでいるんだけど、家だと大爆発、ということが結構あるんですよ。
本人は学校や施設ですごく頑張って、周囲に合わせている。でも、エネルギーが切れたとき、家に帰ってリラックスモードに入ったときに、癇癪が出る。過剰適応の結果、疲れすぎてしまうんですね。
外でどれだけ頑張れていても、家で安定しない場合には、配慮のある場所で本人が楽にいられるようにしてあげることが重要かなと思っております。
どの子にも、どこかしら良いところはあります。ただ、良いところばかりを見て「これで大丈夫、頑張れます」と周りが言ってしまうと、本人がきついパターンもある。
特別支援学級が悪いと思わないでほしいし、通常級で頑張りすぎているかも、は取り越し苦労かもしれない。だからこそ、本人の状況をよく確認して考えていくことが重要なんです。
ズレを放置すると、二次障害につながりやすくなります。ほとんど喋らなくなる。朝の時間になると頭痛や腹痛が増える。これはSOSのサインかもしれません。
そうなってきたら「今の学級、合っていないのかな」と考えてみてください。二次障害は、なってしまうと長く続く可能性があるので、極力ならないように気をつけていく必要があります。

まとめ:ズレに気づいたら、こう動く
最後に、ズレに気づいたらどうするか、です。
まず、担任の先生にストレートに伝えてください。
ただ、知っておいてほしいのが時間の感覚です。実務の流れは、担任やコーディネーターへの相談から始まって、校内での共通理解、教育委員会の審査を経て決まります。数ヶ月かかることがほとんどです。
僕の見てきた事例でも、1学期でズレが分かってきて、夏休み明けの2学期に相談、翌4月に切り替えというパターンが多いかなと思います。
その間は、できることを少しずつ。通常級に移りたいなら通常級で過ごす時間を増やしてもらう。特別支援学級に移りたいなら、支援学級にいる時間を増やしてもらう。そこからのスタートが良いのかなと思っております。
そして、うまくいく転級には共通点があります。事例が溜まってきて思うのは、この3つです。
- 本人の意思がはっきりしていること(行きたくない教室では、モチベーションが下がって荒れやすくなります)
- 体験期間を挟んで、段階的に移行すること
- 担任・支援の先生・保護者の面談を重ねること(情報交換の中で、着地点が見つかります)
そして最後に、これを覚えておいてください。
家庭は、学校から見えない半分を持っています。
学校から帰ってきたときの疲れ具合、朝の身体症状。家庭でしか見えないことを学校にどんどん共有してもらうと、ズレが小さくなって、本人が一番居やすい場所が見つかります。
判定と実態のズレは、現実にあります。ただ、昔と比べて柔軟に変えやすくなっている。変わるには時間もかかる。
だから、入学した後も子どもの様子をよく観察して、本人に合う場所を探し続ける。
この目線を持っていただけると、一番良いのかなと思います。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう。皆様よき療育ライフを。

