ADHDの症状(不注意・多動・衝動性)と発症メカニズム。遺伝は関係ある?脳機能と環境の重要性を解説

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はい、こんにちは。ゆうです。

僕は、富山県富山市で児童発達支援施設の指導員として活動している、現役の職員です。

このブログ(YouTube)では、発達障害や子育てに関する現場のリアルな情報や、保護者の方の気持ちが少しでも軽くなるような考え方を発信しています。

さて、本日の記事は、「ADHDの主要な症状と発症メカニズム」についてです。

お子さんがADHDと診断された時、「どうしてうちの子が?」「遺伝が原因なの?」「育て方が悪かったの?」と、その背景について深く悩んでいませんか?

今日の記事では、ADHDの症状タイプ別の特徴と、その背景にある脳機能や遺伝・環境について詳しく解説していきます。

ADHDは3つのタイプに分かれる

まず一番最初に大事なこととして、ADHDっていうのは大きく3つのタイプに分かれます。

  1. 不注意優勢型:忘れ物が多いタイプですね。
  2. 多動性・衝動性優勢型:ちょっと動き回っちゃったり、落ち着いていられないタイプ。
  3. 混合型:不注意も多動性も衝動性も合わせ持ったタイプ。

この3タイプに分かれるというのがすごく大事で、僕たちが行う療育の中でも、不注意が強いタイプにはそれに合った支援をしますし、多動性や衝動性が強い場合にはその子たちに合った支援をします。

同じADHDという診断名だったとしても、やることは変わってくるんですよね。

ADHDの診断自体は、DSM-5などの診断マニュアルや行動観察に基づいて最終的に診断されるんですけど、正直、同じ診断名でも症状の現れ方や支援の必要性には、ものすごく大きな幅があるなと思っています。

ゆう先生の補足解説:DSM-5とは?

DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成した「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)」のことです。

これは、精神疾患の診断における世界的な基準の一つとされています。

ADHDの診断もこの基準に基づいて行われ、「不注意」や「多動性・衝動性」の症状が複数、6ヶ月以上にわたって持続し、家庭や学校といった複数の場面で困難が生じていること、そしてその症状が12歳以前から見られること、などが要件となっています。

ADHDの診断要件として「12歳以前に発症」というものがあります。

だから、大人になってからADHDと診断された方も、問診の時に「ちっちゃい頃どうでしたか?」と、結構昔の話を聞かれたんじゃないかなと思います。

子供の頃から特性があって、大人になっても困り感が変わっていない、という場合に診断されるわけですね。

タイプ別:ADHDの具体的な症状

では、具体的に「不注意」「多動性」「衝動性」の症状を見ていきましょう。

不注意症状(注意の調整が難しい)

不注意っていうのは、注意の「維持(向け続けること)」、注意の「配分(必要な情報を選ぶこと)」、注意の「転換(切り替えること)」に困難が見られます。

授業中にぼーっとしちゃうとか、気が散りやすいとか、忘れ物が多いとか、うっかりミスが多いとか。

周りからは「集中力がない」「やる気がない」と思われがちなんですけど、これは本人の気持ちの問題というよりは、「注意の調整能力」という脳の機能的な問題が背景にあります。

具体的には、授業中に集中が3分くらいしかもたなかったり、計算ミスやケアレスミスがすごく多かったり。

指示を聞き流すことも多くて、お父さんお母さんが「わかった?」って聞くと元気に「わかった!」って言うのに、後で聞くと全然聞いてないとか(笑)。

僕も昔、財布とか鍵とか大事なものを本当によくなくしました。

これらは本人が悪いから起きているわけじゃなくて、注意制御の困難から起こってるんですよね。

もう一つの側面「過集中」

不注意というと「ぼーっとしている」イメージが強いですが、もう一つの側面として「過集中」も実は不注意に該当するんです。

ADHDの子って、ゲームや好きな作業に没頭しすぎる「過集中」という現象が結構あるんですね。これって「集中してない」不注意とは真逆に思えるじゃないですか。

でも実は、「注意の制御ができていない」という同じ根本から来てるんです。例えば「ゲームは30分で終わりね」と決めても、脳がそこから切り替えるのが難しい。

ドーパミンとかの脳内物質がうまく制御できない結果、一つのことにのめり込みすぎてしまう。

ADHDの子は「0か100か」になりがちで、定型の子が「20から80」の間を調整できるとしたら、ADHDの子はその調整が難しい、というイメージですね。

多動性症状(活動性の調整が難しい)

多動性っていうのは、「年齢や状況に不相応な過剰な活動性」として現れます。

例えば3歳の子が活発に動き回っているのは、成長段階として適正ですよね。

でも、これが9歳になって、小学校の授業中に走り回るとなると、やっぱり年齢にそぐわない。こういうのが多動性です。

落ち着きなく動き続ける、静かにしていられない、というのが特徴ですね。子供の場合は走り回る、座ってられない。大人の場合はソワソワ感や落ち着かなさとして現れることが多いです。

これはプラスに捉えれば「元気」なんですけど、本人たちが「元気よく動かざるを得ない脳の構造になっている」って思った方がいいですね。

衝動性症状(行動の抑制が難しい)

衝動性っていうのは、行動を抑えきれずに、すぐに反応してしまう特性です。

例えば、質問が終わる前に答えちゃう、順番が待てない、他人の話に割り込む、衝動的に人を叩いちゃう、とか。

「待つ」「抑える」という行動が難しい形で現れます。感情のコントロールが苦手な子も多いですね。

やった後に「失敗したな」って後悔してる子も多いのが、この衝動性かなと思います。

これも脳機能上の問題で、もう「反応しちゃう」んですよ。止めようと思っても、瞬きを我慢するのが辛いのと同じで、自動的に起こる反応を止めるのはすごく難しいんですよね。

多動性・衝動性の年齢による変化

多動性や衝動性って、幼児期にはものすごく目立つんです。でも、青年期や成人期になると、この「動き回る」という多動は結構落ち着いてくることが多いです。

ただ、ここがすごく大事なんですけど、外側から見える動き(走り回る、壊す)はなくなっても、内面的な衝動性(衝動的な意思決定、判断)は変わらないことも結構あります。

大人になってからギャンブルやゲームにはまりやすかったり、お金を使いすぎちゃったり。

会社で走り回ることはないけれど、内側では多動や衝動の根本原因は変わってないよ、ってことを覚えておいてほしいなと感じます。

なぜ起こる?ADHDの背景にある脳機能

じゃあ、これらの症状は「なぜ」起こるのか。脳の背景を見ていきましょう。

不注意の背景:「実行機能」の課題

不注意は、一言でいうと「実行機能」との関係がうまくいっていない状態です。ワーキングメモリや注意制御といった実行機能の課題が、不注意を引き起こします。

実行機能とは、目標を達成するために、行動や思考を管理・調整する、いわば脳の「司令塔」のような機能です。

ワーキングメモリとは、情報を一時的に保持しながら、同時に処理する能力で、「脳のメモ帳」や「作業台(机)」によく例えられます。

定型発達の子の脳が「綺麗な机」だとしたら、ADHDの不注意傾向がある子の脳は「すごく散らかった机」のような状態です。

机の上がごちゃごちゃで、いろんな情報(物)が次々置かれるので、どれが必要な情報(鉛筆)で、どこに置いたかを覚えておく(保持する)のが難しい。

この状態で「勉強に集中しろ」と言われても難しいですよね。

さらに、脳の様々な領域(前頭前野、頭頂葉など)の連携がうまくいっていない、ネットワークがちぐはぐな状態だとも言われています。

多動性の背景:「調整弁」の課題

多動性は、行動の抑制や運動系の「調整機能」がうまく働いていない状態です。

イメージとしては、音量を上げる「調整弁(つまみ)」みたいなものですね。

定型の子がこのつまみをゆっくり正確に動かして「ちょうどいい音量」にできるのに対して、ADHDの子はここの調整が苦手で、「0か100か」みたいに、思いっきり動かしちゃう感じ。

「加減が難しい」んです。行動の抑制や運動の制御に関わる脳の機能がうまく働かない結果、活動の調整ができなくなっているんですね。

衝動性の背景:「報酬系」の課題

衝動性は、「報酬系」の影響が結構大きいです。

一言でいうと、「即時報酬(すぐに得られるご褒美)」を優先して、「遅延報酬(長期的な結果やご褒美)」を待つことが困難、という感じです。

目の前に1000円が落ちていたら、その先に100万円がもらえるゴールがあったとしても、まず目の前の1000円に飛びついちゃう。

報酬系が、短期的な報酬には活発に反応するけど、長期的な報酬にはモチベーションを保てないんです。

神経伝達物質のアンバランス

ADHDは、「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質の機能異常とも密接に関係していると言われています。

ドーパミンは「やる気」や「報酬」、ノルアドレナリンは「覚醒」や「注意」に関係してるんですけど、ADHDの子はこれらの「調整が下手」なんですよね。

先の長い話(宿題とか)にはドーパミンがうまく出てこなくてやる気が上がらないのに、「遅刻しそうだ!」とか「明日テストだ!」みたいに局所的な問題がボンと置かれると、急にドバドバ出てきて集中できたりする。

このバランスが良くないから、安定した行動が取りづらいところがあるかなと思います。

ADHDは遺伝?環境?発症メカニズムの理解

ここまで脳機能の問題だと話してきましたが、最後に「じゃあ、それは遺伝なの?環境なの?」という話をします。

遺伝的要因は高い(70-80%)

まず、ADHDは遺伝率がものすごく高くて、70%から80%くらいは引き継ぐと言われています。お父さんかお母さんがADHDの遺伝子を持っている場合、お子さんもADHDになる可能性は高いです。

(最重要)遺伝と「環境の相互作用」

ただ、ここが僕が一番大事だと思うんですけど、遺伝的要因は確かにあるんですが、環境と組み合わさって初めてADHDの症状が出てくるパターンもあるんです。

元々ADHDの素養があったとしても、特定の環境で育つことによって、その要素があんまり出ない子もいれば、逆に強く出る子もいる。

遺伝子が単独でADHDを引き起こすんじゃなくて、「環境因子との相互作用」がめちゃくちゃ大事なんです。

ADHDの発症リスクを高める可能性のある環境因子として、「周産期(妊娠中や出産前後)」の環境が脳の発達に影響を与えることが指摘されています。

例えば、妊娠中の喫煙や飲酒、低出生体重、早産などが、脳の構造や機能の発達に影響を与え、ADHDの症状が出やすくなる「可能性」がある、ということです。(もちろん、これらが全てではありませんし、当てはまっても症状が出ない場合もたくさんあります)

愛着の不全とADHD症状

これは僕の現場での肌感覚なんですけど、「この子は本当にADHDなのかな? 実は愛着障害なんじゃないのかな?」って思うこともあります。

ネグレクト(育児放棄)や虐待、慢性的な強いストレスといった「愛着の不全」があると、ADHDの症状を「悪化」させたり、ADHD「っぽく」見せたりすることがあるんです。

元々ADHDの素養を持ってる子が強いストレスを受けると、より症状が強く出てしまう可能性もある。

だから結論として、安定した環境と、ポジティブな関わり方がめちゃくちゃ大事だということです。

ADHDは、脳の構造上の問題であり、神経伝達物質の問題であり、そして遺伝と環境の相互作用から生まれる、情報処理の仕組みの違いなんです。

まとめ

今日のポイントを振り返ります。

  1. ADHDには「不注意」「多動・衝動性」「混合」の3タイプがあり、それぞれ症状の現れ方が違うため、タイプ別の支援が重要です。
  2. これらの症状の背景には、「実行機能」(散らかった机)、「調整弁」(0か100かの活動)、「報酬系」(目先の利益を優先)といった脳機能の課題や、ドーパミンなどの神経伝達物質のアンバランスがあります。
  3. 発症には高い遺伝的要因もありますが、それ単独ではなく「環境」との相互作用が症状の現れ方に大きく影響します。安定した環境とポジティブな関わりが非常に重要です。

結論:読者へのメッセージ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

今日の話が、この記事を読んでくださった保護者の方や当事者の方にとって、何かしらの「行動のきっかけ」になったり、見てくださった方の「気持ちが少しでも軽くなる」ことに繋がれば、僕もとても嬉しいです。

ABOUT ME
ゆう|Yuu
ゆう|Yuu
子どもの発達の専門家
現役児童指導員。一般社団法人dil理事。年間300回以上、通算2000回以上の療育。児童発達の専門家。富山県内の療育施設で主に児童・幼児の療育を行っています。ニコニコ学習塾も絶賛活動中。
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