「毒親」とは何か? 支配型と無関心型の特徴、そして「世代間連鎖」を断ち切るために

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こんにちは。ゆうです。

僕は、富山県富山市で児童発達支援施設の指導員として活動している、現役の職員です。

このブログ(YouTube)では、発達障害や子育てに関する現場のリアルな情報や、保護者の方の気持ちが少しでも軽くなるような考え方を発信しています。

さて、本日の記事は、「毒親(どくおや)」についてです。

言葉として知ってはいても、自分や自分の親に当てはめて考えるのは、とても苦しいテーマかもしれません。

この動画(記事)を見ることで、過去のことを思い出して嫌な気持ちになる方は、どうか無理をせず、ご自身のタイミングでご覧ください。

「毒親(どくおや)」とは何か?

まず、「毒親」という言葉ですが、これは「子どもを心理的に傷つける親」を指す言葉です。

これは医学的な診断名(病名)ではありません。アメリカの心理療法士であるスーザン・フォワード氏が1989年に提唱した、臨床現場における「概念(考え方)」です。

ゆう先生の補足解説:毒親(Doku-Oya / Toxic Parents)とは

大切なことなので強調しますが、「毒親」というのは医学的な診断名(病名)ではありません。スーザン・フォワード氏が、子どもの人生を支配し、子どもの自尊心やアイデンティティ(自己)を破壊してしまうような親を、キャッチーな言葉で「毒(Toxic)」と表現したんですね。

彼女がこの概念を提唱するまで、社会通念として「親は常に正しいもの」とされ、子どもは親の言うことを聞くべきだとされてきました。

日本でも昭和の時代は、家の父親が一番権力が強く、子どもや奥さんは従うもの、という風潮が強かったですよね。子どもの苦しみや「嫌だ」という気持ちは、ずっと無視されてきた歴史があります。

親を「断罪」するのが目的ではない

この概念が広まったのは、親を「断罪(罪を裁く)」するためではありません。

毒親の元で苦しんできた人たちの多くは、「自分が悪い子だからだ」「自分がダメなせいだ」と、自分自身を責めてしまっているんです。

スーザン・フォワード氏の目的は、そうした人々に「それは、あなたのせいではなかったんだよ」と伝えること。

苦しんできた人々を「罪悪感」から解放することが、この概念の本当の目的なんです。

毒親の主な2つのタイプ

毒親には、大きく分けて2つのタイプがあると言われています。

① 支配・過干渉型

あなたのためなのよ」という言葉を使いながら、子どもの自由を徹底的に奪っていくタイプです。

子どもの行動や選択、例えば進路、人間関係、ひどい時には服装や髪型にまで口を出し、自分の意思で決めさせようとします。

一見すると「教育熱心な親」に見えることもありますが、実際には「自分の言うことを聞かせたい」「自分が安心したい」という親自身の欲求を満たしているにすぎません。

こうして育った子どもは、常に親の評価を気にするようになり、「自分で考える力」を失っていきます。親の意に沿わないことをしようとすると、心に「罪悪感」を抱えて動けなくなってしまうのです。

② 無関心・ネグレクト型

支配型とは対照的に、子どもに一切関与しない、子どもを無視するタイプです。

食事の世話や清潔さを保つといった物理的なネグレクト(育児放棄)も含まれますが、それ以上に深刻なのが、子どもの感情や苦しみに目を向けない「心理的ネグレクト」です。

子どもが話しかけても反応しない。困っていても助けない。

(ちょっと前に流行った『タコピーの原罪』という漫画がありましたが、あの中に出てくる家庭環境は、この支配型と無関心型を分かりやすく描いているなと感じました)

親が反応してくれないと、子どもは「自分は必要ない人間なんだ」「自分は重要じゃないんだ」と感じるようになり、無気力・無関心になってしまうことがあります。

共通する「言葉による心理的虐待」

この両方のタイプに共通して見られるのが、「言葉による心理的虐待」です。言葉の暴力を使って、子どもをコントロールしようとします。

  • 「お前は本当にダメな子だ」
  • 「お前は可愛くない」
  • 「お前なんて生まれなければよかった」

こういった言葉で子どもの人格を否定し、恐怖や罪悪感を植え付けます。

子どもは、「親の言うことを聞かないと、自分は認められないんだ」と思い込まされ、親に心理的に「服従」せざるを得ない状態に追い込まれていきます。

毒親が生み出す「機能不全家族」と「アダルト・チルドレン」

毒親がいる家庭は、多くの場合「機能不全家族」と呼ばれる状態になっています。

ゆう先生の補足解説:「機能不全家族」と「アダルト・チルドレン」

機能不全家族(きのうふぜんかぞく)とは、家庭が本来持つべき「安心・安全な場所」としての機能が失われている状態を指します。

親が親としての役割(子どもを守り、育む)を果たさず、子どもが親の機嫌を取ったり、世話をしたり、親の理想を叶えるための道具のように扱われたりする、いびつなバランスで成り立っている家族のことです。

アダルト・チルドレン(AC)とは、こうした機能不全家族の中で生き抜くために、自分自身の感情を押し殺し、特定の「役割」を演じ続けた結果、大人になってもその役割(生き方)から抜け出せず、生きづらさを抱えて

子どもが演じる「役割」

機能不全家族の中では、子どもは無意識に「役割」を演じるようになります。毒親である親が思い描く「理想の家族」を維持するために、その役割を強制させられるとも言えます。

  • 良い子役(ヒーロー):親の期待に応えようと必死に頑張る。
  • 問題児役(スケープゴート):わざと悪いことをして、家族の問題から目をそらさせる。
  • 世話役(ケアテイカー/ヤングケアラー):親の面倒を見たり、愚痴を聞いたりする。
  • いない子役(ロストワン):存在感を消し、誰にも迷惑をかけないようにする。

こうして「自分」を後回しにし、他人の感情を優先する生き方が習慣になってしまうんです。

「罪悪感」による支配と「愛着の歪み」

特に支配型の毒親は、子どもの「罪悪感」を利用して支配を強めます。

「お前なんて生まれなければよかった」と突き放したかと思えば、「だから、こうしなさい」と指示を与える。

子どもは親に愛されたい。でも、近づくと傷つけられる(恐怖)。

でも、愛されたいから近づき、また傷つく…。

このように「愛情」と「恐怖」が混ざり合った複雑な感情(愛着の歪み)を抱えることになります。

安心しきって愛情を受け取ることができないため、大人になってからの対人関係でも、わざと相手を振り回して愛情を確かめる(試し行動)など、極端な行動に出てしまうこともあります。

毒親の「世代間連鎖」という悲劇

ここまで聞くと、「毒親ってなんてひどいんだ」と思うかもしれません。

ですが、ここで知っておかなければならない、とても悲しく、重要な事実があります。

それは、毒親自身も、その親(つまり祖父母)から同じように育てられた「被害者」であった可能性が非常に高い、ということです。

ゆう先生の補足解説:なぜ「世代間連鎖」は起きるのか?

これは本当に悲しい連鎖なのですが、なぜ起きてしまうのでしょうか。

理由は、毒親自身も、それ以外の「愛し方」「関わり方」を知らないからです。自分自身が親から支配されたり、無視されたりして育ったため、それが「親子の当たり前」として無意識にインプットされています。

愛情の表現方法や、他者との適切な境界線(どこまでが自分で、どこからが相手か)を学ばないまま親になった結果、自分がされて一番嫌だったはずの行為を、無自覚に自分の子どもに「再現」してしまうのです。

毒親が悪い、と単純に断罪するのではなく、こうした「連鎖の仕組み」があるんだということを理解することが、この問題を解決する第一歩になります。

毒親の影響から回復するために

では、もし自分が毒親の影響を受けてきたと感じたら、どうすればいいのでしょうか。

①「自分のせいではなかった」と理解する

回復のために最も大事なステップは、これまでの苦しみは「自分のせいではなかった」と心の底から理解することです。

親があなたにしたことは、親の責任です。

あなたが悪い子だったからでも、あなたの努力が足りなかったからでもありません。

まずは、自分と親の責任の所在をはっきりと整理(分離)することが大切です。

過去にされた嫌なことを無理に「許す」必要はありません。

ただ、その親もまた、その親から同じようにされてきたのかもしれない、と「理解」することはできるかもしれません。

許せなくても、理解することはできる。そうやって客観的に状況を整理し始めると、心は回復に向かいやすくなります。

② 世代間連鎖を「自分の代で断ち切る」

そして、一番大事なのは、「自分はその行動を繰り返さない」と決めることです。

お父さんお母さんも苦しかったのかもしれない、でも、自分は自分の子どもに同じことはしない。

この「世代間連鎖を、自分の代で断ち切る」という強い意志を持つことが、あなた自身と、あなたの未来の家族を守る力になります。

まとめ

今日の話を振り返ります。

  • 毒親は医学的診断名ではなく、「支配・過干渉型」と「無関心・ネグレクト型」に大別される、子どもを心理的に傷つける親の概念であること。
  • 毒親家庭は「機能不全家族」となりやすく、子どもが生き抜くために特定の役割を演じる「アダルト・チルドレン」という状態につながること。
  • 毒親自身も被害者であったという「世代間連鎖」の構造があり、回復の第一歩は「自分のせいではなかった」と責任の所在を整理し、その連鎖を自分の代で断ち切ると決めること。

結論:読者へのメッセージ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

この問題は、発達障害の問題とも深く関連することがあり、とても複雑です。

ただ一つ言えるのは、僕らは人間である限り、こうした問題から完全になくなることはないのかもしれません。

大事なのは、もし自分が毒親になってしまったかもしれないと気づいた時に、あるいは自分が毒親に苦しめられたと気づいた時に、その関係を修復できる方法や、助けを求められる場所がすぐに見つかる社会であることだと思います。

今日の話が、この記事を読んでくださった保護者の方や当事者の方にとって、何かしらの「行動のきっかけ」になったり、見てくださった方の「気持ちが少しでも軽くなる」ことに繋がれば、僕もとても嬉しいです。

ABOUT ME
ゆう|Yuu
ゆう|Yuu
子どもの発達の専門家
現役児童指導員。一般社団法人dil理事。年間300回以上、通算2000回以上の療育。児童発達の専門家。富山県内の療育施設で主に児童・幼児の療育を行っています。ニコニコ学習塾も絶賛活動中。
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